なぜ歯科クリニックで「お局問題」が起きるのか?

はじめに

多くの歯科クリニックで耳にする悩みのひとつが「お局問題」です。
特定のスタッフが強い影響力を持ち、院内の雰囲気を支配してしまう現象は、決して珍しくありません。
なぜ歯科医院でこうした問題が頻発するのでしょうか?

1. 小規模組織ならではの構造的要因

歯科医院は院長と数名のスタッフという小規模体制が一般的です。
役職制度や明確な階層がなく、スタッフ同士の力関係がそのまま職場の雰囲気に直結してしまいます。
結果として「勤続年数の長いスタッフ」が自然と発言力を持ち、リーダー的立場になることが多いのです。
加えて、「理念」や「職場としての方向性」が十分に共有されていないことも見逃せません。
組織として“何を大切にし、どんな医院を目指すのか”という共通認識が欠けると、
スタッフそれぞれが自分の価値観で行動し、個人の影響力が強まりやすくなります。

2. スタッフ構成とキャリアの特徴

歯科衛生士・歯科助手は女性が多く、同じ職場で長く働く人も珍しくありません。
一方で昇進やキャリアパスが少ないため、仕事上のやりがいが「人間関係の影響力」へとすり替わりやすくなります。
そのため「勤続年数=権力」となり、“お局”が誕生しやすい環境が生まれます。

3. 院長のマネジメント不足

多くの院長は臨床に強みを持っていますが、経営や人事マネジメントについて学ぶ機会は限られています。
人間関係のトラブルが起きても「波風を立てないために静観」してしまいがちです。さらに問題なのは、「なんとかうまくやっといて」という一言に代表されるような責任放棄です。
明確な指示や判断を避け、現場任せにしてしまうことで、
適性を見極めずに特定の職員へ裁量が集中し、結果としてその人が“実質的なリーダー”になるケースも少なくありません。
こうした構造が“お局”と呼ばれる存在を生み出す温床となっているのです。

4. 日本的な職場文化と患者接点の影響

日本の職場文化には「年功的な序列」や「先輩の言うことには従う」風土が残っています。
さらに、歯科医院では患者と接する時間が長いスタッフほど「患者からの信頼」を得やすく、その評価が「自分のやり方が正しい」という自己正当化につながります。
こうして院長よりも“お局”の意見が優先される逆転現象が起こることもあります。

まとめ

「お局問題」が歯科医院で頻発する背景には、

  • 小規模で階層がない組織構造
  • 理念・方向性の共有不足による判断基準の不統一
  • 女性スタッフ中心で勤続年数が権力化しやすい人材構成
  • 院長のマネジメント不足と責任放棄
  • 日本的な文化や患者接点の影響
    が重なっています。

放置すれば離職や職場の停滞につながりかねませんが、理念の再確認と職場全体での方向性共有によって、組織は必ず再生できます。
職場の雰囲気を整えることは、スタッフの定着だけでなく患者満足度の向上にも直結します。

次回は「お局問題をどうやって解決していくのか?」について具体的なアプローチをご紹介します。